騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~
「昔のウチの主人よりもイケメンねぇ、あなたの旦那さま。羨ましいわぁ」
ふふっ、旦那さまだって。
わたしたち、夫婦に思われたみたい。
それから部屋に戻っても、顔のニヤけが止まらなかった。
「麻菜、顔、変」
「だって、秀ちゃん。わたしたち、夫婦に見られたんだよ、ふふっ」
「くくっ、それでそんなにご機嫌なのか。でもさ……」
わたしの顔を覗き込み、楽しそうな表情で言った。
「俺たち、いずれはそうなるんだから」
前髪を上げられ、おでこにキスを落とされ、わたしはますます赤く頬を染めた。
もう、秀ちゃんにはドキドキさせられっぱなしだよ。
「そういう反応、昔っから変わんねーな」
目を細めた彼がそっと近づき、今度は唇にそれを落とした。
ふわりと温かい、彼そのものを表すような優しいキスだった。