騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~



「……はい。お久しぶりです、おばさん」


ぎこちない挨拶。

それでもおばさんは、そんなわたしを抱きしめて、涙を流してくれた。



「よく帰ってきたね。おかえり、麻菜ちゃん」


そうだ、おばさんはこういう人だった。

秀ちゃんが事故にあった時も、わたしに対して嫌な顔一つしなかった。



「母さん、そんなとこで突っ立ってないで、中に入ってもらいなさい」


おじさんも中から顔を出して、優しく微笑んだ。


おじさんも変わらない。

目がなくなるまで、顔をくしゃくしゃにして笑うところ。





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