騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~
でも、少しずつ、一歩ずつ……
わたしたちのペースで進んでいけばいい。
「残ってもらって悪かったな。皆、お疲れ。明日もよろしく頼むよ」
これで今日の意見交換は終了した。
「あっ、そうそう。ジョンはもう少し残ってくれ」
ジョンだけ残され、わたしたちは会議室を出た。
ふぅ、今日の仕事長かったなぁ。
グーッと伸びをしながら歩いていると、前を歩いている仲森さんと幸さんの会話が聞こえてくる。
「ちょっと、秀平。この後、暇でしょ?何か奢りなさいよ」
幸さんの言葉に耳を疑った。
思わず足が止まる。
だって、今……幸さん。
仲森さんのこと“秀平”って呼んだよね?
「なんでお前に奢らないといけないんだよ。一緒に行ってもいいけど、割り勘だ。割り勘」
「えー。だって、秀平の方が上司じゃない。上司が部下に奢るのは当然でしょ?」
「はぁ?」