大地主と大魔女の娘


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 そう、すべては夢。


 夢。


 一夜の……まぼろし。


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 夢を見ていた。


 だが何の夢だったのかは思い出せない。

 朝日に暴かれる。

 夢の残骸を拾い集めようとして、頭を振った。

 それがあまりにも無意味だからだ。


 寝台から起き上がる。


 カーテンを開け、全身で朝日を受け入れる。

 手を握り締めた。夢の名残を握りつぶすかのように、力を入れる。

 夢など、夜の見せる幻でしかないのだから。


 俺が向かうべきは夢などではない。

 現実だ。


 今日も勤めが待っている。


 そうだ。


 今日はスレンが保護した「大魔女の娘」とやらを、神殿に迎える日だ。


 その娘は――髪も瞳も闇色まとうカラス娘だという。


 娘は次代の、巫女王候補となる。


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