大地主と大魔女の娘
守りたい、ずっと守ってくれていたヒトはドコにももういない――。
そう思い当たったら視界がぼやけた。
おばあちゃん。
この人、怖いよう……。
せっかく、止まったと思っていた涙が溢れた。
怖いのは何故だろう。
この方はワタシの事を百万回だってすり潰せるであろう、財力をお持ちだ。
それに抗う財など、生まれてからこの十七年間の間に一度だって持ち合わせた事の無いワタシ。
誰に軍配が上がるかなんて、あえて言葉にするまでも無い。
今だって庭先にたくさんの犬たちが見えた。
皆、訓練されたであろう狩猟犬であった。
どんな犬が狩に向いているかの知識があることを呪う。
嫌でも現況が絶望的と知れるではないか。
首輪は威嚇的なとんがりを首周りに持たせた造りであった。
しかも投げられた肉らしき塊を、互いに引き千切りあうという過酷さだった。
こんなのがうようよしている庭に出たら最後、どうなるかなんて考えたくも無い。
だからと言って抗う術も無い。
悔しい。屈辱以外の何物でもない。
(でも、もういいや。構うもんか)
どうせ家も土地もこの人に取られるだろうから。
そうしたらこの地を出て行くだけの話だ。
悔しいけどそうするより他は無い。
だからせめて泣き顔は晒すまいと顔を俯けた。