「…今まで…

俺の事を″好き″って言ってくれる人は、居たんだけど」




暫くして あなたが、

私から目を逸らして どこか遠くを見つめるように、言った。






「…だけど、誰にも応えられなかった。


″消える″って、分かってたから。


誰とも、深く関わろうと しなかった。




深く関われば関わる程…、…傷付けるから」




深く踏み込んで″傷付くのが怖い″と思う私と違って、

あなたは、″傷付けるのが怖い″みたいだった。


そんな あなたの発想が私の中には無かったから、

私は何も言えずに ただ、あなたを見つめていた。




すると あなたは ふいに私に視線を戻して、言った。






「…なのに…

あんたには色んな事、話しちゃったね 笑


″忘れて″っつーのも勝手だと思うけど、

忘れて良いから」




…今まで自分の事は なかなか話してくれなかったのに、急に話すだけ話して…

それも決して、″話し過ぎた″っていう量でも ないのに…。


しかも それを″忘れて″なんて、確かに勝手。


でも…、

私は、あなたが人と深く関わらないように していたのに、

他の人には話さないような事を、私に話してくれた という事実が、ただ嬉しかった。


例え あなたが話してしまった事を後悔していた と しても、

他の人が知らない あなたを知れた事が、嬉しかった。


あなたの特別な存在に、なれた気が、したから…。




…そんな私も、大概 勝手だと、思う。





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