「今すぐ じゃなくて いいけど、

気持ちを前向きに持ってたら、

今まで見えなかった物も見えると思うから…」




「…うん」






「それまでは辛いかも…だけど、

…少し気を楽に持ってね」




「…ありがとう」




どうやって貴史の事を知ったのか疑問では あったが、

せっかく自分の事を心配してくれる凛に、和は笑顔で そう言った。


すると、凛も笑顔になって、

ほっと胸を撫で下ろしたよう…だった。






「…よかったぁ。


和ちゃん、

満くんの事、ずっと忘れられないんだろうな って思ってたから、

こんな事 言っても、すぐ受け入れられないんじゃないか って、思ってたの。


…だから、安心した」




「うん。


…え?」




思わず聞き返した和に、凛の方が不思議そうな顔を したのが、

何だか可笑しかった。






「だから…、

和ちゃんは満くんの事 好きだったから、

満くんが居なくなっちゃって かなり落ち込んでた…でしょ?


それが分かってたから、今までも触れないよう に してたんだけど…、

でも そろそろ少しずつ前を見ても良い頃なんじゃないか って思って…」




「満くんの事は……大丈夫」




途中で遮って和が そう言うと、

凛は心底 吃驚したような顔を、した。






「…大丈夫って?


どういう事?」




「実は…、

最近 落ち込んでるのはね、…」






和は凛に″あの夜″から今までの事を、話した。




凛は″うん、うん″と相槌を打ちながら、和の話を最後まで真剣に聞いてくれた。




貴史に対する想いは ずっと燻っていたが、

凛に全部 話した事と、その反応の お陰で、心は少し楽に なった気がした。




しかし…

続けて凛が″でも…″と言い出した時、

突然、不安が立ち込めた。





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