花
「…先輩」
声の主を見て、凛は また困ったような顔を、した。
「…先輩?」
あまりにも、そうは見えない容姿の彼が先輩だという事に驚いて、
和は思わず、凛の言葉を繰り返す。
そんな和の声に反応して、
それまで″そんな明らかに不機嫌に なんなくても いいじゃん!″と、
凛に口を尖らせて抗議していた彼が、和を見た。
…一言で表すなら、猫みたいな男の子だった。
小さくて可愛いのだが…、
″可愛い″と言うよりも、″愛らしい″と言う表現が しっくり来るような雰囲気で、
とにかく目が、猫みたい だった。
和を見ると、その猫に そっくりな目を細めて、
にぱっと笑った。
「…″先輩には見えない″って言いたいんでしょー」
「あ、えーと…」
「いいよ、気に しないから♪」
あっけらかん と していて、あまりにも明るい雰囲気の彼を見て、
和は今までの凛との真剣な話を続ける気が、失せていた。
それは凛も同じだったようで、″先輩″から目を移すと、
和に いつもの笑顔を、向けた。
「…そうそう、紹介するね。
えーと…
こちらは、″ムニーさん″こと、伊藤 蓮 先輩。
この学校の先輩でも あるんだけど、私のバイト先の先輩なんだ。
…で、こちらは私の友達の、佐倉 和ちゃん」
次に蓮の方を向いて、凛が和を紹介した。
「よろしくねっ、和ちゃん♪」
顔は猫だが、
そこは犬が尻尾を ぶんぶん振っているような笑顔で、蓮が言った。
それを見て、
先輩なのに、頭を″よしよし″と撫でたくなる衝動に駆られながら、
和は おずおず と 答えた。
「よ、よろしく お願いします…伊藤 先輩?」
「ムニーで いいよー、
和ちゃん♡」
なぜか疑問形に なりながら言う和に、蓮は笑った。