お昼休みが終わり、授業の始まりの合図が鳴る頃、

和は屋上に居た。




6月の空は何故か晴れ渡っていて、風が爽やか だった。


心は どんより していたのに、

フェンスに捕まって足を掛けると、

今にも飛べそうな、軽い気持ちに なったのを、和は覚えている。


ただ ただ空が青くて、

そして広くて、

自分の存在を ちっぽけに感じれば感じる程、

簡単に飛べる気が、した。






「ここから、飛び降りれば…」




…もう、誰も傷付けなくて済むかな…。


私が居なくなれば…、

凛ちゃんはムニー先輩と幸せに なるかな?




…遠くでチャイムの音を聴きながら、和は そんな事を考えていた。


″自殺願望″なんてものは、

今までも一度も、持った事は なかった。


ただ、屋上の この景色は、

あまりにも静かで、穏やかで心地よく、

和に現実を忘れさせた。




今、この場所では、

″現実″は辛いものでしか、なかった。


空が青ければ青いほど、

居心地が良ければ良いほど、

和は現実に戻りたくない、と思った。




…戻ったら、私は どうすれば いい?


凛ちゃんは、ムニー先輩は…?


きっと二人とも、私が戻ったって、苦しいだけ なんだ。


私が居なくなったら…、

いつかは私を忘れて、幸せに なるよね?




…だったら このまま、消えて なくなれば いい、と 和は思った。


この空間が あまりにも気持ち良すぎて、

その方が ずっと楽だと、思った。








「…何、してんの?」





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