暫くして、ゆっくり と 家に向かって歩き出した和だったが、

貴史が居る病院から だんだん遠ざかって行くのが何だか悲しくて、

その足取りは、自然と重くなった。


知り合いが入院している と 言うくらい だから、

貴史が病院に行くのは これきり では ないだろうし、

また何度も会える筈なのに、

少しでも貴史の近くに居たい という思いが、和を支配した。


それに、″貴史が近くの病院に居る″と考えるだけで、

このまま帰っても、

家で じっ として居る事は、出来ないかも しれない。




ふと、和は立ち止まった。






「何、やってるのかなぁ…」




自分の行動に半ば呆れながら和は呟いたが、

体は もう勝手に病院への道を、戻り始めていた。





< 63 / 178 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop