花
次の日から、
和は また、貴史を避けるように なった。
…貴史に気持ちが無い事は知っていたが、
いつもと変わらない日常が、
その事実を更に突き付けて いるよう、だった。
ファンクラブの女の子達やクラスの男友達に囲まれて
楽しそうに笑う彼を遠巻きに眺めていても、
その視線が合う事は無く、
一度 貴史が こちらを見そうに なった時は、すぐに目を逸らした。
″いつか忘れられれば いい″と、願った。
貴史と教室で会って″忘れ物?″と訊かれる度に肯定しては いたが、
それは嘘で、実際 和は忘れ物が多い訳では なかった。
本当に忘れ物を したのは、初めて貴史と話した あの夜と、
凛から逃げよう として鞄を置いてきた時くらいで、
貴史を避けている今、忘れ物を装って戻って行ったり、
放課後の教室に一人 残る必要は、和には もう なかった。