Lonely Lonely Lonely
その日、どんよりとした雲に見送られながら、新幹線に飛び乗り、タクシーに飛び込んで
私は病院にたどりつきました。
二時間弱、かかってしまいました……。
樹は、思ったより、きれいな顔をしていました。
「ああ、めぐみちゃん!ついさっき、だったんだよ。ほんの数分前……ああ……神様……」
泣きながらすがりつくお母さんに、私は息を切らしながら、尋ねました。
「ハア、ハア、もう、息をしていないのですか?ハア」
あああ……ウウウ………呻き声ともとれるそれとともに、お母さんは、うんうんと私の足元で頷きました。
「立ちなさい、みっともない。仕事放り出して、来てくれたんだぞ」
お父さんは、そう言って、お母さんの両脇を抱え立ち上がらせました。
すると、弟の界くんがお母さんと私に、そっと椅子を差し出してくれました。
「どうぞ」
控えめなその声。
樹にそっくりな、その声……。
「めぐみちゃん、落ち着いたら、ちゃんと顔見てやってくれ。あいつは、最後までうわごとで、めぐみ、めぐみと……」
お父さんも、とうとう、こらえられなくなった様子でした。
私は、立ち上がり樹の元に進みました。
「なんで、なんで私、引き止めなかったんだろうね。今朝、行ってらっしゃい、なんて言うんじゃなかっ……。
私のせい、 全部私のせいだね。ごめんね。ごめんね。いつもみたいに、行かないで、バイクはもうやめてって言っていれば、
私がそう言っていれば……」
「めぐみさん、それは違う。今日のことはあなたのせいじゃない。
あなたは、いつも、そうやって樹の身を案じてくれていたんだよね。でも、それに背いたのは、こいつだ。樹自身だよ。
だから、そんな風に、自分を責めないでくれ。悪いのはこいつ自身なんだからね。
ただ、そんな奴でも、最期にひとつだけいいことしやがった。それは誉めてやってくれ。
こいつな、幼い子供の命を救ったんだよ。自分の身を削って、な…………」
ああ……飛び出してきた子供のこと……。