孤高の魚


インスタントコーヒーは、酸味の強い味がした。

そうして、あの頃のような香ばしい香りもしない。


あまり美味しくはないコーヒーを啜りながら、僕はまたあの冷蔵庫に貼り付けた手紙を見つめてみる。

静かに、けれどもやっぱりどこか特別な雰囲気でそこにあるブルー。


……野中七海。


僕はまた、その名前を頭の中で読み上げてみる。
幾度目かの彼女の名前は、僕には何だか少し、特別な響きの様に感じられた。


……野中七海。


彼女がもし、歩太の不在を知ってしまったのなら、あのコーヒーメーカーのようになってしまうのだろうか。


……そうかもしれないな。
と、思う。


けれども僕には、やっぱりどうする事もできない。
野中七海の事は僕は知らないし、コーヒーメーカーの使い方も……僕にはわからないのだから。


< 15 / 498 >

この作品をシェア

pagetop