孤高の魚




けれども野中七海も満更でもないらしい。
尚子から歩太との思い出を聞き出す事だけは、いつも楽しみにしていた。


「尚子さんはアユの事、よく覚えているわ。ほんの些細なこともよ?
さすが女の子ね。
工藤さんもアユの事をよく覚えてくれているけれど、あの人は分析的だから……
それはそれで、的を射ていて、面白いのだけど」


そう言って彼女は、尚子が帰った後に、ダイニングテーブルで時折ブルーのノートを開いて、何やら書き込んだりしていた。


……彼女と歩太の居場所は、どうも順調に確立されているらしい。

ノートのほぼ半分が、彼女のあの華奢な文字で埋まってきている。


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