孤高の魚
「いや、無理してるんじゃないかなと思って。
君を見てると、何か……痛いからさ」
『君を見てると痛い』?
まるで陳腐な口説き文句だ。
こんな昼間に似合う台詞じゃない。
我ながら、やっぱりどこかおかしい、と思う。
………
「……そんなこと、ないわ」
彼女は弱々しい声で、けれどもキッパリとそう言った。
僕は、そのはっきりとした彼女の物言いが……何故だか今日は、妙に気に障る。
………
僕はコーヒーメーカーのポットに残っていたコーヒーを、自分のカップに注ぎ、僕のいつもの席、彼女の向かいへと座り、彼女の用意してくれた朝食を眺める。
……食欲がない。