孤高の魚



「まだ、二人が一緒に暮らし始める前……」


野中七海は少しずつ思い出しながら、やんわりとした口調で語り始める。


「……あの頃はまだ、17才だったわ。高校二年生。
二人にはアメリカへ行く夢があったの。
一咲は語学を勉強するつもりだったし、アユは医学の道へ進むつもりだったのよ。
みんな、それには賛成してたの。
アユもとっても優秀で、お互いに高い目標を持つ事はいい事だって。
それで、パパにも気に入られて……」


パパ……
なぜここで「パパ」という単語が出て来るのか、僕には理解しかねた。

一咲さんの家族の話だろうか。


「いずれは、アユを養子にするつもりだったのね。
アユの家は母子家庭で、貧しかったから。
きっと、パパが面倒をみるつもりだったんだわ」



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