孤高の魚



「昔からアユは掴み所がなくて、何にでも変身することができたわ。
わたしにとって、兄だったり、パパだったり……
時には弟のように、無邪気を装うこともあった。
アユの存在自体がフワフワとしていて……
誰のためでもなく、同時に誰のためにも、アユは自分の存在の形を変えていたの。
きっと、誰にでもそうだったのよ。
アユはいつも『誰のもの』でもなく『みんなのもの』だったわ。
……そもそも、アユが誰か一人だけのものになるなんて不可能なことだったの。
だけど、アユ本人にはその自覚がなかったのね。
もちろん、一咲にも、それはわからなかった」


………


鋭い視線だった。

彼女は突然に、鳥肌が立つほどの冷たい視線をテーブルに投げた。




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