孤高の魚



………



……



………



気が付くと……
僕はキッチンのダイニングに座ったまま、朝を迎えていた。


カチャリ、カチャリと、食器の擦れる音がする。
慌てて顔を上げると、手に持っていたはずの吸いかけの煙草は灰皿の上だった。
ほとんど無意識に、揉み消していたらしい。


「おはよう、アユニ。そんな所で寝てるんだもの、びっくりしちゃった」


耳に響く軽やかな声。
キッチンに立ってこちらを見ているのは、爽やかな笑顔の野中七海だった。



「ああ……おはよう」


「コーヒー、できてるわよ」


掠れて疲労した僕の声とは対照的に、明るく澄んだ彼女の微笑み。

いつもの、何事もなかったような一日が、僕の意図しない所で今日も始まってしまうらしい。


彼女の淹れてくれたコーヒーが、テーブルの上で湯気を上げて、僕を歓迎してくれている。



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