孤高の魚
「おまたせ致しました」
しばらくして彼が持って来たのは、三角形のビールグラスの中で、白いたっぷりの泡を湛えている、念願の生ビール。
けれどもそれは、口をつけてみると、ちょっと苦みがきいているだけの、ノンアルコールビールだった。
僕は少しガッカリしたけれども、決して顔には出さなかった。
カウンターの隣を見ると、三十代ぐらいの男性が僕と同じグラスで生ビールを飲んでいる。
彼はだいぶ酔っているように見えるので、彼のグラスは間違いなく生ビールなのだろう。
もう一度、僕の生ビールに口をつけてみる。
少しピリッとはするけれど、やっぱりノンアルコールビールだった。