孤高の魚
決断



………



暫くの間、沈黙が訪れていた。

僕は野中七海の横顔を見詰めながら、彼女の決断を待っていた。
例えそれが言葉にはならなくても、感情が渦を巻いて吸い込まれる彼女の中心には、いずれ何かしらの決意があるように思われた。


冷気が足元を捕らえて僕の膝を震わせる。
彼女もまた同じように、寒さを感じているはずだ。


「……服を着た方がいい」


そう言った僕の声が、彼女の耳に届いているのかいないのか判断がつかなかった。
微動だにせず、彼女は宙に視線を投げたままだった。


………


お互いが無言のまま一点を見詰め、どのくらいの時間を費やしただろう。

彼女はカバーを身体に巻き付けたまま静かに横たわり、その重みでベッドが僅かに軋んだ。


まるで石になってしまったかのように、ずっしりとベッドに沈んでいる彼女のシルエット。
その輪郭が、微かに震えている。


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