シュガー&スパイス
「友里香、ちょっと向こう見ずのとこあるから」
そう言った英司は、海と空の境界線を眺めた。
「前に話してた隣の部屋の、だよな?
友里香とも知り合いって少し驚いた」
「うん。あたしも……」
こんなことってあるんだ……。
ほんと、世の中狭い。
そんな事を考えながら、ぼんやりと英司の視線の先を追う。
入道雲と空の合間に、キラキラ光って見えるのは飛行機。
その後ろに薄い雲の筋が出来て、そのまま消える。
聞こえるのは波がぶつかる音。
肌を撫でる風の音。
遥か上空から届く、飛行機のエンジン音。
白昼夢でも見てるみたい。
見るもの、聞こえるそのすべてに現実感がない。
「彼氏?」
え?
その声はすぐそばでリアルに聞こえ。
あたしを夢の狭間から引き戻した。
顔を上げると、まっすぐに英司がこちらを見ていて。
眩しそうに目を細め、ワックスでセットされた前髪がフワフワと風に乱されていた。
「……」
ジッと英司のその瞳に見据えられて、なぜか何も言えなくて。
押し黙ってしまったあたしをしばらく見つめていた英司は、フッとその表情を崩した。