シュガー&スパイス
「ごめん。困らせるつもりはないから」
「え?」
英司はそう言うと、ソファに体を預けながらその背に首をもたげた。
長い足がうーんと伸びて、その瞳は青い空を仰ぐ。
「ちょうどいいかもしれないな」
そう言ってふと目を閉じる。
英司?
訳がわからなくて、首を傾げると、それがわかってるかのように英司はあたしに視線を移した。
「彼には、ちゃんと自分を出せてるのか?」
優しい声色。
英司はそう言うと、ニッコリと微笑んだ。
それって、どういう……
首を傾げたあたしを見て、英司は楽しそうに口元を緩めるとテーブルの上に置いてあったペットボトルを手にした。
「菜帆はさ、俺と付き合ってる時結構無理してただろ」
「え?」
「自覚ないわけじゃないよな」
「……」
英司、気付いてたの?
なんか……恥ずかしい……。
そうだ、あの時のあたしは、エリートと呼ばれる英司に見合う女になりたいと、背伸びしてた。
無理してた、ってそう思った時はなかったけど。
でも、そう見えてたのかな……。