シュガー&スパイス
物語の続きは。

アパートに着くころには、すでに空は茜色に染まっていた。

太陽が見えなくなると、一段と冷えてくる。

手も足も、体も。
まるで氷のようだ。


――ガチャン


鍵を開けてドアノブを回したところで、違和感を感じた。





顔を上げると、それは隣の201号室から……。
千秋の部屋からだ。


なんだろう?

なにこの感じ。

ザワザワする。


ジッと見つめていると、背後で人の気配がしてハッとして顔を上げた。

そこには、見覚えのある鍵を持った恭子さんが立っていた。


「……恭子さん、こんにちは」


いつも笑顔で、5月の爽やかな空のような恭子さん。
でもその表情はどこか浮かない顔だ。


そして恭子さんはため息を吐きながら残念そうに笑った。


「引っ越しちゃったわね、千秋君」




……え?


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