シュガー&スパイス


ダメだった……?

きっと、家族の事を考えて、お父さんが思ってる事を尊重して。
千秋は結婚と言う道を選んだんだ。

ここにきていないのが、答え。



「……マリア様……」



ポツリと呟いた瞬間、ハッとした。


このステンドガラス……。


そして思い出す、あの夢を……。












『泣かないで。 そうだ、この教会の伝説教えてあげる』

『伝説?』




泣きやんだあたしを見て、得意そうに、彼は笑った。
それは、王子様とお姫さまのお話。


とてもとても想い合っていたふたりが
離れ離れになってしまう、そんなお話だった。

永遠を誓う王子さまの話に
あたしは夢中になったんだ。


『姫……
私の心はずっとあなたと共にあります。
だから悲しまないで。
必ず……
必ず、あなたをお迎えに参ると誓います』


『ええ 待っています。
……ずっと 永遠に』




そして、旅立つ王子。
でも、王子はいつまで待っても現れることはなくて……。

それから幾年も過ぎて。

でも、お姫様は王子様が現れるのをあの教会で待ち続けた。



ずっと

ずっと、ずーっと。


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