愛しい人～歌姫の涙～

「由香」


四限目が終わると、先程までその額を赤くするまで机に顔を着けて居眠りしていた由美子が、幸せに満ち溢れたような笑顔でこちらにやってくる。

そして、学食に行った男子の机に自分の弁当を置き、勢いよく私の机の前にくっつけてきた。


「やっと、昼休みになったね」


満面の笑みでこちらを見ながら、弁当箱を素早く開けた。




入学してから、私はまだ由美子以外の女子とはそこまで話していない。

授業のこととかを少しだけ話したりはする程度だけだが、由美子はその持ち前の明るい性格で早くもクラスの人気者になりつつある。

それなのにこうして毎日私と弁当を食べ、話をしては笑っていた。

周りから見れば、完全に不自然でいて不釣り合いな二人だが、彼女にはそんなこと全く関係ないようだ。

苦手なタイプであり、だけど嫌いなタイプではない···