歩み
俺がこの世界からいなくなっても誰も哀しまないだろ?
いなくなって欲しいと願う人は必ずいるはずだ。
例えば親父とか…。
富田だっていなくなって欲しいって思ってるんだろ?
要らないよな、こんなワガママなヤツ。
要らないなら要らないとはっきり言ってよ。
「歩さん…なにを…言ってるんですか?」
固まった表情で俺を真っ直ぐ見つめる富田。
俺はその富田の視線を反らさずに、真正面からぶつかる。
俺は生きていていいの?
なにを望んで、生きればいいの?
もう、分かりません。
けど、分かりたくありません。
「…俺、この世界から消えたいんだ」
静かすぎて不気味な廊下。
きっと家政婦たちの声は聞こえるのだが、今の俺には聞こうという意思さえなかった。
それだけ神経な望みということ。
富田には届いただろうか?
すると、富田は俺の方へ歩み寄り、俺を見下ろした。
無表情の富田を見て、今までで一番怖い彼の表情だと感じる。
その次の瞬間、富田は右手を高く上げ、俺の左頬を強く叩いた。