歩み
俺を消したいのなら俺だけを追い詰めろ。
沙紀は関係ないだろ?
廊下に倒れる司を、上から見下ろして、馬乗りとなる。
「お前は小さすぎるんだよ!!どうして俺だけを恨まない?沙紀は関係ないだろ!?今頃泣いているかもしれないのに…
お前は人を好きになる資格なんてない!!」
涙が、零れそうになった。
苦しくなった心が張り裂けそうになった。
沙紀の泣き顔が、司に向ける笑顔が、俺の頭の中を駆け巡っていく。
「お前がいなければ俺と沙紀は幸せだったんだよ!!お前がいるから滅茶苦茶になる!!」
司の怒鳴り声が廊下に響いていく。
良かった、ここが教室から離れていて。
もし教室の目の前でこんなやり取りをしていたら、野次馬が集まってくるだろうから。
「お前は嫉妬を愛情だと思い込んでいるだけだ。嫉妬は愛情なんかじゃない。沙紀はそれが嫌だったんじゃないのか?自由になりたいからお前から離れていったんだよ!!」
だって俺も自由になりたいから、分かるんだよ。
自由になりたいから、離れたいんだ。