歩み
沙紀の言葉がすっと心の中に入ってきて、触れて、溶けていく。
その瞬間、瞳から涙が出てきた。
繋がった瞬間だったからかな。
嬉しくて、なんて表現したらいいかわからないよ。
俺は沙紀に涙を見られないように、もう一度沙紀を抱きしめた。
「…すげぇ嬉しい…」
さっきより強かった気がする。
力が入っていた気がする。
けど我慢して?
この痛さを愛しさだと思ってよ。
「…不器用でごめんね…伝えるのが遅くなってごめんね…。あたし嬉しかったの。心配してくれて…」
そんなこと言わないでよ。
また、涙が流れるから。
涙がひとつ流れると、
愛がひとつ増える。
まさにこの時だった。
この愛が一生続いて欲しい。
この光溢れる部屋の中で誓おう。
「…沙紀、これからは名前で呼んでよ…」
耳元でこう囁いて、沙紀の返事を待つ。
沙紀は照れたのか、しばらくなにも言ってくれなかったけど、最後にちゃんと言ってくれた。
可愛らしい声で。
「歩…」
離れないよ。
離れたくないよ。
ずっと、ずっと一緒。
約束だからね…。