歩み
この幸せを逃がさないように、キミを真っ直ぐ見つめるよ。
「ちょっと、聞いてるの?」
俺の耳に沙紀の声が聞こえてくる。
その声を聞いた俺は、無性に嬉しくなるんだ。
変わらない、なにも変わっていない。
沙紀といるときは初恋のまま。
「え?なに?」
「せっかく人が教えてるのに。もう教えないよ?」
目の前には沙紀の怒った表情があった。
そして下へと視線をずらすと、机の全体的にノートと参考書などが広げられている。
数学や、国語。
それに歴史や理科。
そう、今は俺の部屋で期末テストの勉強中。
あれから、沙紀とは順調に交際中。
あの噂は、次の日にはなくなっていた。
そして隼人が俺に謝ってきて、俺は隼人を許すことにした。
今は隼人の気持ちが分かるから。
好きな人が一番という隼人の考えは間違っていなかった。
だって俺もそうだから。
「歩?聞いてるの?さっきからぼーっとしすぎだよ」
沙紀が俺の顔の前で手をひらひらとさせる。
俺は沙紀を見ながら微笑むのだ。