歩み
この言葉を聞いた時、背筋に寒気が走った。
本当にこんなことを思っているのだろうか?
『大事な息子』
そんなこと思ってないよ、絶対。
思っていたとしても、『奴隷』か『ペット』くらいだ。
息子だなんて思ってないだろ?
「大事な息子なら、どうして息子の幸せまで奪うのですか?あたしのことが気に入らないならそれでいいです。けど、父親なら息子の幸せを一緒に喜んであげるのが普通じゃないんですか?」
選挙の立候補者のように淡々と話を進めていく沙紀。
俺はそんな沙紀の姿を愛しい気持ちで見ていた。
俺の為に言ってくれている。
嬉しい、ただ単純に。
沙紀の言葉を聞いた親父は黙り込んでしまう。
沙紀に圧倒されたのか。
「あなたは歩のなにを知っていますか?好きな食べ物を知っていますか?どういう時に笑うか。見た目は意地悪そうだけど本当は優しい所とか、知っていますか?あたしは知っています。だってあたしは歩の彼女なんだから!!」