歩み


俺は後ろを振り返る。
そして優を見て驚くのだ。


何故ならば、優の口元が切れてうっすらと血が残っているから。
それを見た俺は、口をぽかんと開けてバカ面を下げて優を凝視していた。


「鈴木くんどうしたの?口切れているじゃない!」



やはり先生もそれが気になったのか、心配の言葉を並べる。
けど優はそんな先生の優しさを蹴って、浮かない表情を向けて席に向かっていく。



「大丈夫です、席着いていいですか?遅れてすみません」



教室が凍りついた瞬間だった。
明らかに優は怒っている。
近くで優を見ると傷が生々しくて、こっちまで痛く感じた。



「大丈夫?まぁいいわ。今度から気をつけて」



先生は優の態度を見て感づいたのか、さらりと流した。


けど俺は黙ってみていられない。


「優?どうしたんだよ?あの朝の奴とケンカしたのか?」



図星だろ?優。
だってさっきから俺と目を合わせようとしないもんな。



「うん…まぁ…」



「大丈夫か?」



静かにこう言うと優は俺に笑顔を向けた。
けど、その笑顔に俺は傷ついたのだ。



優、ちゃんと笑えよ。



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