歩み



優が見せた笑顔は明らかに作り笑いだったのだ。

言葉では「余裕!」と言っているけれど、全然そう思わなかった。


余裕ならもっと余裕な態度を見せろよ。


けど俺は優に合わせるようにして笑顔を作った。


俺も最低だよな。


前を向いて、先生の話を聞く。
けど内容が頭に入ってこない。

後ろにいる優が心配だ。今何を思っているのだろう?



そんな時、耳の中にある人の声が聞こえてきた。


「鈴木くんどうかしたの?」



その声は小林だった。
小林も心配しているのだろう。
言葉から心情が溢れている。


けど優はそんな小林に冷たい態度を取ったのだ。


「……別に」



その小林を聞いた俺は次第に腹が立っていく。


なに?なに?
その態度はないだろ?


せっかく人が心配しているのに、そんな態度をするなよ。




もし優が本当に小林が嫌でそんな態度をしたのなら俺は納得するよ。


けど、お前は小林のことが「好き」なんだろ?



俺は気付いてしまった。


優と小林の距離はまだまだ遠いと。



この日から、優と小林は全く話さなくなったのだ。




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