歩み
これ以上、離れさせたくない。
二人の気持ちが繋がらないなんて嫌だよ。
「心配してくれるの?…大丈夫だよ。ありがとう…」
小林は俺に笑顔を見せて、安心感を与える。
俺は頷くことしかできなくて、ゆっくりと小林の腕から手を離した。
どうして気づかなかったのだろう。
この時、小林の体が恐怖で怯えていたということに。
震えていた体に、俺はどうして気づかなかったのだろう。
小林はサラサラな髪の毛を靡かせて、廊下を走って行った。
「大丈夫だよ。百合は小柄だけど強いから…」
すると沙紀が隣に来て、俺の肩をぽんぽんっと叩いた。
その温もりが俺の心や体に伝わってきて、泣きそうになった…。
優と小林が仲良く二人で帰ってくることを願おう。
俺が唯一出来ること。
けど神様はそんな小さな望みでさえ、嘲笑い蹴ったのだった。
…数分が経った頃、俺と沙紀が話している間に、誰かがやってきた。
俺はその人を確認するために顔を上げる。
きらりと、何かが反射をした。
それは…、涙。