歩み


小林、優が心配なんだろ?
不安なんだろ?
辛いんだろ?

聞かなくても分かるよ。小林はすぐ顔に出ちゃうタイプだね。



「それが分からねぇんだよ。いきなり用事出来たって言って、どっかに行ったからさ」



沙紀を見上げて、首を傾げる。
本当に分からない。
優がどこに行ったかとか、優が誰と会っているのかとか。


力不足でごめん。



「私…不安だからちょっと行ってくるね…」



突然小林がこう言ってきた。
精一杯笑う小林。
笑う力なんて本当は残っていないんだろ?
じゃあそんな無理して笑うなよ。


教室を出ていく小林のあとを俺は追いかける。
そして小林の細い腕を掴み、彼女を引き止めた。



「斉藤…くん?」



驚いた表情を俺に向けてくる小林。


嫌な予感がしたんだ。




「今は、行かない方がいいかも…」



もしかしたら相沢瞳と会っているのかもしれないから。
そんな二人の姿を小林が見たら、絶対また泣いてしまう。


さらに二人の距離が離れてしまいそうでこっちが怖かった。



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