歩み


俺は必死に考えていた。優が何を考えているのか。

正直、優が理解出来ない。

ふらつく理由あるかよ?

ワケわかんねぇ。



「もう…私…ダメみたい…」


崩れる小林。
床に座り込み、涙の速度を上げた。



「百合…」



沙紀が小林の体を支える。



「俺の席に座れよ。」



俺はこう言って、立ち上がり小林に席を譲る。
下を向いて、ただ黙って涙を流す小林を俺と沙紀は浮かない表情を浮かべて見ていた。



「…俺が引き止めれば良かったんだよな…」



「歩…」



俺がちゃんと引き止めれば良かった。
なんとなく嫌な予感はしていたのだから、その理由を話して行かせなければ良かったんだ。

そしたら、そしたら、
小林は涙を流さなくてよかったかもしれないのに…。



そんな時、こんな状況になっていると知るはずもない人物が教室に戻ってきた。
教室には静かな空気が漂っている。
生徒たちが小林の涙に気付いているのだろう。

そんな空気が余計苦しくさせる。



< 236 / 468 >

この作品をシェア

pagetop