歩み


「歩…どうしたんだよ?」



何も知らない人物とは優のことだ。
優はすぐに小林の異変に気づき、俺たちに近寄ってきて状況を知ろうとした。


けど言えるはずがない。
優が悪いと言い張れる理由などないし、かといって小林が先ほど見た光景で泣いていると言えるわけもない。


だから濁すしかなかった。



「優…まぁいろいろ」



この言葉しか思いつかなかった。



「何かあったのか?」



心配した表情をして小林を見つめる優。
その横顔に『好きだから心配だよ』と書いてあるように思えた。



こんなにも顔に気持ちが溢れているのに何故言えないの?


「今は言えないみたいなの」



小林の頭を撫でながら、優にこう言った沙紀。
けど優は沙紀の言葉に納得していないようだ。



気付いてくれよ、頼むから。


どんよりとした空気を漂わせたまま、授業が始まるチャイムが鳴り響いた。



各々の席に着く生徒たち。


時計の針がひとつ進む。

ほら、もう未来へ進んだよ。



優は未来になにを残す?


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