歩み


今の優は好きじゃない。外形ばかり強がっていて、内面は弱い。
それを知っているから余計近づきたくない。


昔に戻って欲しい、出来れば。



俺の願いは叶わないまま、季節だけが過ぎていく。
冬がこの街にやってきた。
短い冬休みが始まる。


密かに計画していたことが出来なくなってしまった。
それは俺の家でクリスマスになると毎年行われる鍋パーティー。
この行事は沙紀と付き合うことになった中学二年生の頃からやっているもの。

この日、沙紀は手料理をしてくれる。
それが毎年楽しみだった。


今年は四人でやろうと思っていたのに、その計画は儚く散ってしまった。



冬休みのある日。
俺はこの日、沙紀の家にいた。
沙紀愛用の抱き枕を抱えながら、考え事をする。


それは優と小林のことだ。




「歩?考え事?」



沙紀がティーポットから紅茶を注ぎながら聞いてきた。



「うん。なんか…苦しくてさ…」



部屋中に広がるアールグレイの香り。
その香りは俺に癒しを与えた。



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