歩み
「どうしたじゃねぇよ!!小林留学するんだって?」
冷静でいられない俺は、立ち上がり優の肩を掴み体を揺らした。
「…あぁ…」
優の顔の表情が変わる。さっきとは真逆な顔つきだ。
後悔をしているが何も言えないと我慢をしているような表情だ。
涙は流していないけど、瞳が泣いている。
俺はこの時、嘘ではないと確信を持った。
優の表情がそう言っている。
「何で言わなかったんだよ!!」
もっともっと、早く言ってくれたら、沢山思い出を作っておきたかったのに。
俺はこの時、もう二度と会えないような気持ちでいたのだ。
また会えるのだから思い出など作らなくてもいいのに、どうしてこう思ったのだろう。
自分でも謎だ。
「昨日決定したんだ」
俺を真っ直ぐ見つめる優。
その瞳の奥には優の男らしさが見えていた。
「あと一週間もないんだぜ!?それでいいのかよ!!」
肩を掴む手に力が入る。華奢な優の肩が骨折してしまいそうなくらいだ。
優が小林の留学を止めなかったのは、愛情表現だったのかな。