歩み
なぜ沙紀は俺にカップケーキをくれたのだろう。
その理由は…、特別だからかな。
思い込みかもしれないけど、そう思ってしまう。
沙紀が中庭に呼んだ理由は、告白なんかよりもずっと嬉しいことだった。
手のひらにちょこんと存在を示しているカップケーキ。
ほんのりとしたきつね色が美味しさを表現している。
「なんでカップケーキ?意味が分かんないよ?」
俺は困った表情を沙紀に向ける。
春の暖かい風が俺たちを優しく包み込んだ。
沙紀は視線を足元に落として、言葉を並べる。
「昨日のお礼。昨日、部活でカップケーキ作って余ったの」
昨日のお礼?
俺、なんかしたっけ?
「俺、お礼されるようなことした?」
こう言うと沙紀は顔を上げて、怒った顔を見せてきた。
俺は必死に昨日のことを思い出す。
…もしかして、あのこと?
それは先生が始業式に出なかった理由を聞いてきたこと。
黙ってしまった沙紀をかばったから?
もしかして、それ?