歩み
「覚えてないならいいわよ。ケーキ返して!」
眉間に皺を寄せて、一歩俺に近づく沙紀。
もしかしたら間違っているかもしれないけど、そんなのどうだっていい。
当たっているか、当たってないかなんて俺には興味がないから。
この、カップケーキだけで俺は嬉しいよ。
「何で返さなきゃいけねぇんだよ!これはもう俺のもんだって!」
笑いながらこう言う。
けれど沙紀の怒りは静まらず、さらにもう一歩俺に近づいてきた。
「返してよね!」
ねぇ、気づいているの?
俺たちの距離は1メートルもないこと。
昨日と同じような欲情が芽生えてくる。
「お前、近いよ?
もしかしてまたキスしたいの?」
沙紀を見下ろして笑ってこう言うと、沙紀は俺の言葉を聞いて状況を確認したのか、一歩、二歩と俺から離れていった。
「変な冗談言わないでよ。」
髪の毛の毛先をを指先で触りながら、言う沙紀。
「じゃあ本気だったらキスしていいわけ?」