夫婦の始まりは一夜の過ちから。
あの時と一緒だ。
久と別れる事になった時も寛子は私が口を開くまでなにも聞いてこなかった。
ただただ涙を流す私の肩をよしよしと撫でてくれて、でも久に言われた事や別れる事になった事を伝えたら…
私以上に寛子が泣いてくれて私以上に怒ってくれて、夜養護施設から抜け出して私の家にきてくれた事もあったよね。
怒られるよって言っても‘夏芽が楽になれるなら怒られてもいい’なんて言ってくれたりもして。
その優しさが嬉しくてより泣いちゃったんだよね。
「あのね、寛子」
こういうと怒られると思うけど…
もしも寛子が男だったら私はメロメロに落ちていたと思う。
「ありがとう」
あの時も今も沢山のありがとうを伝えないとね――…