夫婦の始まりは一夜の過ちから。

Conveyance

壱が出ていってしまってからもう２時間が経とうとしている。


ひとりになって冷静になればなるほど言葉の重さを実感し、早く謝りたいと思う気持ちしかない。


壱の番号をだしてあるからあとはボタンを押すだけなのに、――その勇気が出ない。





「壱…」





もう電話していい？


帰ってきてと言ったら帰ってきてくれる？？


聞こえないはずの壱にそう聞く事しか出来ないなんて私は臆病だ。


会いたいよ…


そう呟きながら携帯を握りしめていると。





｛ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾌﾟﾙﾙﾙﾙ｝





携帯からではなくリビングに置いてある固定電話が着信を告げるように激しく鳴り出した。


もしかしたら壱からかもしれない！と一目散に固定電話の元へ駆け寄る。