夫婦の始まりは一夜の過ちから。



「もしもし、加地ですが!」





ドキドキしながら電話に出てみると聞こえてきたのは壱の声ではない。


壱じゃないんだ…


そうガッカリする前に受話器から聞こえてきた言葉に私は。





「そうですけど。えっ…」





ただの悪戯電話である事を願い、そして聞けば聞くほど悪戯電話にしては手が込みすぎなんだと思った。


受話器の向こうの人は壱の名前を知っていて、私が壱のご家族だという事も知っている。


だったらこの電話は嘘じゃないって事…?


そんな…


この電話が病院からという事も、壱が救急車で搬送されたという事も、壱が意識不明だって事も嘘じゃないっていうの?





「……っ」





嘘じゃない。


これは本当の事なんだ…



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