不器用なぼくら
お店の中は騒然とした



お客の悲鳴が聞こえて




テーブルもイスも廉も吹っ飛んだ




そんな廉の胸ぐらをまた掴んで叫んだ




幸宏「廉!!ふざけんなよ!!由美ちゃん傷つけて何ほざいんてんだ!!あぁ!?バカにしてんのかよ!!!」



みお「ちょっと!!ユキちゃん!!どうしたの!?やめてっ!!」



薫「おぃ!!何してんだよ!!」



さえ「お客様の前だよ!!2人も!!」




薫君が俺と廉の間に入って俺を止めようとした




そんな薫君を無視して俺は叫び続けた




幸宏「お前由美ちゃんの気持ち利用したんだろ!!!そうだろ!!!廉みたいな付き合い方してる奴・・・誰も好きになったりしねーよ!!」




廉「・・・・・・」




薫「おい!ユキ!いい加減にしろ!!お客様いるんだぞ!!」




幸宏「何とか言ったらどうなんだよ!!おい!!廉!!」




みお「ユキちゃん!!」




すると廉は今まで見たことないくらい




冷たい目をして俺を見た




















廉「お前に・・・何が分かるんだよ」



























太郎「ユキちゃん」




俺らの所に来たのは雑貨から降りてきた長老だった




長老は薫君をどけて俺と廉の間に入ってきて




俺の手を掴んだ




太郎「お客様がいるんだ。離して」




自然と手の力が緩んで廉を離した




すると長老はテキパキと動き出した




太郎「廉とユキちゃんはスタッフルーム行って」




廉「・・・」



幸宏「・・・」




太郎「お客様!大変失礼しました!今すぐ片付けます!みお、薫君、急いで片付けて」




薫「うん」



みお「は、はい・・・」




太郎「さえちゃん。山さん今日は休みだからすぐにシュン君来てもらうようにして。連絡終わったらカフェのヘルプに回って」




さえ「うん、分かった」




太郎「本当にすみません。お怪我はないですか?」



「は・・・はい、大丈夫です」



太郎「そちらのお客様も大丈夫ですか?」




「大丈夫です。・・・すみません、タオル1枚くれませんか?」




太郎「はい、ただいま」




俺ら以外の皆が動き出した




どうやら俺は凄いことをしてしまったみたいだった




放心状態の俺を見た長老はにっこり笑った




太郎「心配しないで?俺やる時はやるからー」




その姿が



すごくかっこよかった
























それから




俺と廉はスタッフルームにいた



時計の音しか聞こえない



静かな空間に廉の声が響いた




廉「ユキ」




幸宏「・・・・・・」





廉「俺のせいだね。ごめん」




幸宏「いや・・・別に・・・」





廉「ちゃんと話すから、さ。・・・聞いてくれないかな。俺の話」




幸宏「・・・うん」

















廉が初めて話し出した




“廉の話”




俺は思ったんだ




本当は俺なんかよりも



ずーっと ずーっと



苦しかったんだって












俺は 自分の好きな人が



ただ俺を好きじゃなかっただけの話を




その傷ついた気持ちを




廉の事にすりかえて




すべて廉が悪い事にしようとした













俺はただ



好きな人に 



好きになって欲しかっただけだった
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