消えない、消せない



 彼女は俺を知ろうとしてくれた。俺が読んでいる本や聴いている音楽に興味を示し、次第に同じものを愛するようになった。それどころか俺とは違った考え方や捉え方を持ち前の豊かな感性で表現し、たった一月ほどの間で語り合うには絶好の友人にまで上り詰めた。


「私は太宰より夏目漱石が好き。」

「悪くないと思うよ。
好みは人それぞれだからね。」

「あいらぶゆー。を、今夜は月が綺麗ですね…なんて表現したのよ?」

「彼はロマンチストだな。
俺はそんな口説き方絶対にしない。」

「じゃあ、君はどんなふうに女性を口説くの?」

「っ、…素直に好きだ、と言うさ。」

「、…意外。
もっと冷静な人だと思ってた。」



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