マスカレードに誘われて



暫く談笑は続きながらも、イヴの身の回りが着々と調えられていく。

窓の外を見ると、日が傾いて夜が近付いてきている。

「こんな感じで宜しいでしょうか?」

不安そうな表情をする彼女の前に姿見を置き、エリカは彼女に訊いた。
イヴは小さく頷き、鏡の中の自分を凝視する。

エリカは最後に、装飾のついた深い紫色の仮面を取り出すと、彼女に見せた。

「仕上げです。今夜は、何があってもこの仮面を外さないでください」

「何でなの?」

「この仮面には、魔法が掛けられています。仮面を外さない限り、イヴ様をあらゆる危険から守ってくれるでしょう」

「魔法……」

口の中で、小さく呟いてみる。
話には聞いたことがあるが、魔法なんて今まで目の当たりにしたことがない。
正直、信じ難いのが事実だ。

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