マスカレードに誘われて

エリカを見つめ、キースが告げる。
先程とは違う、覚悟を決めたような目。
彼女はそれに驚きながらも、頬を緩めた。

「勿論!ヘマをするつもりは無いわ」

「そう言ってもらえると安心するよ」

彼は優しく微笑むと、彼女に近付く。
そして懐から紫色の石が付いた首飾りを取り出すと、それを彼女の首に掛けた。

「お母様に頼んで、魔法を掛けてもらった。気休めにしかならないだろうけど、身を守ってくれるだろう」

「兄様……」

「正直、君が今生きていることが奇跡に近いけど……今宵も頑張って生き延びてくれ」

「……分かったわ」

エリカは一瞬悲しそうな目をすると、そのままキースに抱き着いた。
彼もそれを受け止めてくれる。

< 37 / 164 >

この作品をシェア

pagetop