マスカレードに誘われて
屋敷を見て回る。
陽が少し傾いてきた。
そろそろ部屋に戻った方がいいのかもしれない。
そんなことを思いながら、廊下を歩く。
イヴがいるとすれば、あの場所しかない。
ロイは、廊下の一番端にある扉を開けた。
「ここにいたのか、イヴ」
床に座っている、見慣れた後ろ姿に声を掛ける。
彼女は背中まである黄土色の髪をなびかせ、振り向いた。
イヴ・ホーキングはロイの妹である。
正確には彼と同い年の妹、つまりロイと双子である。
性格はロイと正反対。
穏やかで、滅多に怒ることがない。
読書好きで、暇さえあれば書庫に篭(こも)っている。
その為、運動は少し苦手、その代わり頭脳は人一倍だ。
双子だが、二人はあまり似ていない。
それでも、母親譲りの透き通った青い瞳と、髪を結んでいる紫のリボンが二人の関係性を示していた。