あの二人に敬意を払おう
どこから流れてきたのか。魔法陣の端から、黒と灰色の混濁した雨雲が吹き出し、中心へと収束する。
文字通りの雲の天幕が二人を見下ろし、時折発生する稲妻がその勢力を増し始めた。
――豪雨。
上空で蓄えた水素の塊が、その許容範囲を越え、灰色の大地に降り注ぐ。
容赦なく大地を叩く水滴。灰に染み込んだと思うと、その真下の、まだ崩れていないアスファルト辺りで停滞した。
ベベリギアには、その現象が最悪の予兆だとしか思い浮かばない。
知らず、背中の大剣を抜いていた。
両刃、真紅の刀身。
ベベリギアと同等のサイズを誇るそれが、彼の両手に持ち上げられている。
切っ先はスペリシアを捉え、同時に、次に訪れる攻撃を高速でイメージしていく。
――彼女は、《群青の水爆布》と呼ばれる《神》だ。ならば、水を操る事のできる彼女が、この豪雨をもたらしたのは――
初撃。
スペリシアの背後に無数の魔法陣が構築されていく。
さながら天に伸びる群青の大樹。
水を操る彼女ならではの背水の陣だろうか。予想通り、魔法陣の壁からは、巨大な水槍が射出された。
全てが水と言う名の液体で生成された一本槍。一見すると、武器と言う形状を象(カタド)る、見せかけだけの液体である。
しかし、その判断は正しくない。
相手は水で戦闘を行う神なのだ。
「ふっ!」