あの二人に敬意を払おう



 力強い気合いが口から漏れ、勢いの増した紅蓮のオーラが全身を激しく駆け上る。
 超高速回転を実現しながら飛来する無数の槍の内一本を、その大剣で切り裂いた。


 当てを失った槍。厳密に言うと『槍だった水』は、大剣によってベベリギアの後ろの大地へ散っていく。


 豪雨によってまだら模様に染まる大地。
 切り裂かれた水槍も、その一部と化すのだった。


 視線を上げると数本の水槍。
 今度は捌ききれないと判断し、眼前に迫る一本を、片手で軽々と振るう大剣によって軌道を逸らした。


 続いて低姿勢を維持しながら頭上を睨み、華麗な足捌きで紙一重の槍幕をかわしていく。


 弾幕ならぬ槍幕。
 ただの銃器ならまだしも、槍という大きさも重量も相当な武器での一斉投擲。
 それが一人の女性によって成されているのだから、彼女を敵に回す、同じ神と誇称される真紅の騎士も、生きている心地がしないのだった。


「我が紅蓮よ!」


 叱声に呼び出されたのは業炎。
 真紅の刀身を燃やす灼熱だが、その程度の熱ではこの剣を融解させるに至らない。
 刀身を叩く豪雨であろうとも、彼の生み出した炎は、未だに鎮火の色を見せないでいた。


 水槍の豪雨を回避した後、次なる襲撃は大地から繰り出された。
 大地を蹂躙する豪雨。
 それによって残されるものは――数多の水溜まり。
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